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たらちねの母がそのなる桑すらに
願へば衣に着るといふものを

歌の意味
母の畑にある桑でさえも、願えば衣として着られるというのに。
鑑賞
巻第七 譬喩歌 1357

詞書は前の歌に続き「木に寄す」
 母の畑の桑でさえ、願えば衣として着られるというのにと詠む一首である。母に大切に守られている娘を母の畑の桑に譬え、心から願い続ければ、その娘を妻とすることもかなうはずだという思いを託している。
 詞書「木に寄す」の歌の一首である。四句の「衣に」は、本巻の第千三百五十四首の「衣に摺りつ」、第千三百六十一首の「衣に摺り付け」と同じく、恋人を得ることを衣に譬える趣向に通じている。作者は未詳である。

 初句「たらちねの」は、「母」にかかる枕詞である。
 二句「母がそのなる」は、母の畑にある、の意。「その」は園で、「なる」は「にある」がつづまった形である。
 三句「桑すらに」は、桑でさえも、の意。桑の葉で蚕を飼い、その糸で衣を織ることを踏まえている。
 四句「願へば衣に」は、願えば衣として、の意である。
 結句「着るといふものを」は、着るというのに、の意。「ものを」は逆接の詠嘆で、自分の願いがかなわないもどかしさを言外に含む。

その:園、畑
くは:桑。葉を蚕の飼料とする
出典
万葉集
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