はしきやし我家の毛桃本茂く
花のみ咲きてならずあらめやも
- 歌の意味
-
ああいとしい我が家の毛桃は、根もとまで茂って、花ばかり咲いて実がならないことなどあろうか。
- 鑑賞
-
巻第七 譬喩歌 1358
詞書は前の歌に続き「木に寄す」
我が家の毛桃が花ばかり咲いて実を結ばないことなどあろうかと詠む一首である。愛する人を我が家の毛桃に譬え、実がなることに恋の成就を重ねて、この恋はきっと実を結ぶはずだという確信を表している。
詞書「木に寄す」の歌の一首である。四句「花のみ咲きて」は本巻の第千三百六十四首と同じ句であるが、この歌が反語で実を結ぶことを確信するのに対し、第千三百六十四首は実を結ばないのではないかと危ぶんでおり、確信と不安の対をなしている。作者は未詳である。
初句「はしきやし」は、ああいとしい、の意の感動の語である。
二句「我家の毛桃」は、我が家の毛桃、の意。本巻の第千三百五十六首の「桃の木」と通じる。
三句「本茂く」は、根もとまで枝葉が茂って、の意である。
四句「花のみ咲きて」は、花ばかり咲いて、の意。本巻の第千三百六十四首と同じ句である。
結句「ならずあらめやも」は、実がならないことがあろうか、いやきっと実がなる、の意。「めやも」は反語で、「なる」は恋が成就することを譬えている。
わぎへ:わが家
けもも:実に細かい毛のある桃
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
たらちねの母がそのなる桑すらに 願へば衣に着るといふものを
- 次の歌
-
向つ峰の若桂の木下枝取り 花待つい間に嘆きつるかも