秋さらば移しもせむと我が蒔きし
韓藍の花を誰れか摘みけむ
- 歌の意味
-
秋になったら移し染めにもしようと思って私が蒔いた韓藍の花を、誰が摘んでしまったのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第七 譬喩歌 1362
詞書は前の歌に続き「花に寄す」
秋になったら移し染めにしようと自分が蒔いた韓藍の花を、誰が摘んでしまったのかと詠む一首である。自分が目をかけて成長を待っていた娘を韓藍の花に譬え、その娘をほかの男に取られてしまった無念を表している。
詞書「花に寄す」の歌の一首である。花の色を衣に移す趣向は、前歌の「衣に摺り付け」と通じている。作者は未詳である。
初句「秋さらば」は、秋になったら、の意である。
二句「移しもせむと」は、移し染めにもしようと、の意で、花の汁を布に移して染めることをいう。
三句「我が蒔きし」は、私が蒔いた、の意で、自分が育ててきたことを表す。
四句「韓藍の花を」は、韓藍の花を、の意で、目をかけてきた娘の譬えとなっている。
結句「誰れか摘みけむ」は、誰が摘んでしまったのだろうか、の意。係助詞「か」を受けて連体形「けむ」で結ぶ。
さる:時節がやって来る
うつし:花の汁を布に移して染めること
からあゐ:ケイトウの古名。花から染料をとった
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
住吉の浅沢小野のかきつはた 衣に摺り付け着む日知らずも
- 次の歌
-
春日野に咲きたる萩は片枝は いまだふふめり言な絶えそね