古典和歌stream

明日香川七瀬の淀に住む鳥も
心あれこそ波立てざらめ

歌の意味
明日香川のいくつもの瀬の淀みに住む鳥も、思う心があるからこそ、波を立てないでいるのだろう。
鑑賞
巻第七 譬喩歌 1366

詞書「鳥に寄す」
 明日香川の淀みに住む鳥も、心があるからこそ波を立てないのだろうと詠む一首である。波を立てない鳥に、人目に立つ噂を立てないよう心して恋を秘めることを譬えている。
 詞書「鳥に寄す」のもとの歌で、この題の歌はこの一首のみである。明日香川の淀みを詠むことは、本巻の第千三百七十九首の「明日香の川の淀めらば」と通じている。作者は未詳である。

 初句「明日香川」は、大和の明日香を流れる川である。
 二句「七瀬の淀に」は、いくつもの瀬の淀みに、の意。「七」は数の多いことをいう。
 三句「住む鳥も」は、住む鳥も、の意である。
 四句「心あれこそ」は、心があるからこそ、の意。係助詞「こそ」は結句の已然形「め」と呼応する。
 結句「波立てざらめ」は、波を立てないのだろう、の意で、「こそ〜め」の係り結びとなる。波は人の噂の譬えとなっている。

よど:水の流れがよどんでいる所
出典
万葉集
前の歌
我妹子がやどの秋萩花よりは 実になりてこそ恋ひまさりけれ
次の歌
三国山木末に住まふむささびの 鳥待つごとく我れ待ち痩せむ