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紫の名高の浦のなのりその
磯に靡かむ時待つ我れを

歌の意味
紫の名高の浦のなのりそが磯に靡くように、あの人が私に靡く時を待っている私なのに。
鑑賞
巻第七 譬喩歌 1396

詞書は前の歌に続き「藻に寄す」
 名高の浦のなのりそが磯に靡くように、思う女性が自分に靡いてくれる時を待っていると詠む一首である。なのりそを女性に譬え、なかなか靡かない相手をじっと待ち続ける男の心が表れている。
 藻に寄せる歌の三首目である。初句と二句「紫の名高の浦の」は、本巻の第千三百九十二首と同じで、同じ名高の浦を舞台に、浦の砂から藻へと譬える物を替えて詠んでいる。作者は未詳である。

 初句「紫の」は、紫が名高い色であることから、「名高」にかかる枕詞である。本巻の第千三百九十二首と同じ初句である。
 二句「名高の浦の」は、紀伊の名高の浦で、今の和歌山県海南市の辺りとされる。
 三句「なのりその」は、海藻のなのりそで、ここでは思う女性を譬えている。
 四句「磯に靡かむ」は、磯に靡くであろう、の意で、女性が自分に心を寄せることを譬える。
 結句「時待つ我れを」は、その時を待っている私なのに、の意。「を」は詠嘆を込めて言いさす。

なのりそ:海藻のホンダワラの古名
なびく:風や波に従って横たわる、心を寄せる
出典
万葉集
前の歌
沖つ波寄する荒磯のなのりそは 心のうちに障みとなれり
次の歌
荒磯越す波は畏ししかすがに 海の玉藻の憎くはあらずて