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秋津野に朝居る雲の失せゆけば
昨日も今日もなき人思ほゆ

歌の意味
秋津野に朝かかっている雲が消えてゆくと、昨日も今日も亡き人のことが思われる。
鑑賞
巻第七 挽歌 1406

詞書なし(挽歌の部)
 秋津野に朝かかる雲が消えてゆくのを見ると、昨日も今日も亡き人が思われると詠む一首である。消えてゆく雲に、はかなく世を去った人を重ね、日ごとに尽きない悲しみを表している。
 挽歌の部の三首目で、前歌に続いて秋津野を詠んでいる。前歌が秋津野の名を聞いて亡き人を思うのに対し、この歌は秋津野の雲を見て亡き人を思い、耳と目で対をなしている。作者は未詳である。

 初句「秋津野に」は、吉野の秋津野に、の意で、前歌の初句「秋津野を」と対応する。
 二句「朝居る雲の」は、朝かかっている雲が、の意である。
 三句「失せゆけば」は、消えてゆくと、の意である。
 四句「昨日も今日も」は、昨日も今日も、の意で、日ごとに思いが続くことを表す。
 結句「なき人思ほゆ」は、亡き人のことが思われる、の意である。

ゐる:雲などがかかってとどまる
うす:消える、なくなる
出典
万葉集
前の歌
秋津野を人の懸くれば朝撒きし 君が思ほえて嘆きはやまず
次の歌
隠口の泊瀬の山に霞立ち たなびく雲は妹にかもあらむ