秋山の黄葉あはれとうらぶれて
入りにし妹は待てど来まさず
- 歌の意味
-
秋の山の黄葉を心ひかれるものと思って、しょんぼりと山に入ってしまった妻は、待っても帰っていらっしゃらない。
- 鑑賞
-
巻第七 挽歌 1409
詞書なし(挽歌の部)
秋の山の黄葉に心ひかれて、しおれた様子で山に入ってしまった妻は、待っていても帰って来ないと詠む一首である。妻の死を、黄葉の美しさにひかれて山に入ったこととして表し、帰らぬ妻をなお待つ悲しみを詠んでいる。
挽歌の部の六首目である。亡き人が山に入ったとする表現は、前二首の泊瀬の山に庵を結ぶという表現と通じている。作者は未詳である。
初句「秋山の」は、秋の山の、の意である。
二句「黄葉あはれと」は、黄葉を心ひかれるものと思って、の意である。
三句「うらぶれて」は、心がしおれて、の意である。
四句「入りにし妹は」は、山に入ってしまった妻は、の意で、死んだことを婉曲に表している。
結句「待てど来まさず」は、待っても帰っていらっしゃらない、の意。「ます」は尊敬の補助動詞である。
もみち:秋に色づいた木の葉、黄葉
うらぶる:心がしおれる、悲しみに沈む
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
たはことかおよづれことかこもりくの 泊瀬の山に廬りせりといふ
- 次の歌
-
世間はまこと二代はゆかざらし 過ぎにし妹に逢はなく思へば