名児の海を朝漕ぎ来れば海中に
鹿子ぞ鳴くなるあはれその鹿子
- 歌の意味
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名児の海を朝漕いで来ると、海の中で鹿が鳴いている。ああ、あの鹿よ。
- 鑑賞
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巻第七 挽歌 1417
詞書「羈旅の歌」
名児の海を朝に漕いで来ると、海の中で鹿が鳴いているのが聞こえ、ああ、あの鹿よと心を動かす一首である。海上で思いがけず聞く鹿の声に、旅の心細さとしみじみとした感動がこめられている。
詞書「羈旅の歌」とあり、内容は旅の歌であるが、挽歌の部の末に置かれ、巻第七の最後の歌となっている。なぜ挽歌の部に置かれたかについては疑問が持たれている。名児の海は摂津の住吉の辺りの海とされる。作者は未詳である。
巻頭の第千六十八首が天の海を漕ぎ隠れてゆく月の舟を詠むのに対し、巻末のこの歌は名児の海を漕いで来る舟を詠んでおり、巻頭と巻末に舟を漕ぐ歌が置かれている。
初句「名児の海を」は、摂津の名児の海を、の意で、字余りの句である。
二句「朝漕ぎ来れば」は、朝に漕いで来ると、の意である。
三句「海中に」は、海の中で、の意。沖の島などで鳴く鹿の声が海上に聞こえたものと見られる。
四句「鹿子ぞ鳴くなる」は、鹿が鳴いているのが聞こえる、の意。係助詞「ぞ」を受けて連体形「なる」で結び、「なる」は音による推定を表す。四句切れとなる。
結句「あはれその鹿子」は、ああ、あの鹿よ、の意。四句の「鹿子」を繰り返し、感動を込めて体言止めで結んでいる。
かこ:鹿
わたなか:海の中、海上
- 出典
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万葉集
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玉梓の妹は花かもあしひきの この山蔭に撒けば失せぬる
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石走る垂水の上のさわらびの 萌え出づる春になりにけるかも