うち靡く春来るらし山の際の
遠き木末の咲きゆく見れば
- 歌の意味
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春がやって来たらしい。山あいの遠くの梢が、次々と花を咲かせていくのを見ると。
- 鑑賞
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巻第八 春雑歌 1422
詞書は前の歌に続き「尾張連の歌二首[名闕けたり]」
遠く山あいの梢が次々に花をつけていく様子から、春の到来を知ったと詠む歌である。前歌が身近な娘の姿をとらえたのに対し、この歌は遠景の山の梢へと視線を広げている。
作者の尾張連は、尾張氏で連の姓をもつ人物である。題詞に「名闕けたり」とあり、名は伝わらない。
初句「うち靡く」は、草木がなびく春のさまから「春」にかかる枕詞である。
二句「春来るらし」は、推定の「らし」で、根拠のある推量を示す。ここで句切れとなり、その根拠が下に倒置されて述べられる。
三句「山の際の」は、山と山の間、山あいの意である。
四句「遠き木末の」は、遠くに見える梢である。前歌の「妹が白紐」という近景と対をなし、二首で近いものと遠いものを見渡す構成となっている。
結句「咲きゆく見れば」は、花が次々と咲き広がっていくのを見るとの意で、二句の「らし」の根拠を示す。「咲きゆく」に、春が遠くから刻々と進んでくる動きが感じられる。
こぬれ:木の枝先、梢
やまのま:山と山の間、山あい
- 作者
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尾張連
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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春山の咲きのををりに春菜摘む 妹が白紐見らくしよしも
- 次の歌
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去年の春いこじて植ゑし我がやどの 若木の梅は花咲きにけり