去年の春いこじて植ゑし我がやどの
若木の梅は花咲きにけり
- 歌の意味
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去年の春に根ごと掘り取って植えた我が家の庭の若木の梅は、花を咲かせたことだ。
- 鑑賞
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巻第八 春雑歌 1423
詞書「中納言阿倍広庭卿の歌一首」
去年の春、根ごと掘り取って庭に移し植えた梅の若木が、今年はじめて花を咲かせた喜びを詠んだ歌である。一年を待った思いが「花咲きにけり」の一句に込められている。
作者の阿倍広庭は、右大臣阿倍御主人の子で、中納言に至った。
初句「去年の春」は、植えた時を示し、一年の時の流れを一首に織り込む。本巻の第千四百三十首も同じ「去年の春」で始まり、去年との対比で今年の花を詠む点で通じ合う。
二句「いこじて植ゑし」の「いこず」は、根ごと掘り取ることである。「い」は接頭語で、わざわざ手をかけて移し植えた様子がうかがえる。
三句「我がやどの」は、我が家の庭先を指す。
四句「若木の梅は」は、植えたばかりのまだ若い梅の木である。若木であるだけに、花をつけるかどうかを気にかけていた心が読み取れる。
結句「花咲きにけり」は、完了の「に」と詠嘆の「けり」で、花が咲いたことへの喜びと感慨を表している。
いこず:根ごと掘り取る
やど:家の庭先、屋敷
- 作者
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阿倍広庭
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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うち靡く春来るらし山の際の 遠き木末の咲きゆく見れば
- 次の歌
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春の野にすみれ摘みにと来し我れぞ 野をなつかしみ一夜寝にける