去年の春逢へりし君に恋ひにてし
桜の花は迎へけらしも
- 歌の意味
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去年の春に逢ったあなたを恋い慕っていた桜の花は、今年もあなたを迎えて咲いたらしい。
- 鑑賞
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巻第八 春雑歌 1430
詞書は前の歌に続き「桜花の歌一首[并せて短歌]」の反歌
去年の春に出会った人を慕い続けていた桜の花が、その人を迎えるように今年も咲いたと詠む歌である。桜を人のように扱い、再会を喜ぶ心を花に託している。長歌である第千四百二十九首の反歌で、長歌が桜の美しさをたたえたのを受け、花と人との再会という形で結んでいる。
左注に「右二首若宮年魚麻呂これを誦む」とあり、若宮年魚麻呂が誦詠した歌であることがわかるが、作者は伝わらない。若宮年魚麻呂は奈良時代の官人で、古歌の伝誦者として万葉集に名がみえる。
初句「去年の春」は、花と人とが出会った時を示す。本巻の第千四百二十三首も同じ句で始まり、去年との対比で今年の花を詠む点で通じ合う。
二句「逢へりし君に」は、存続の「り」と過去の「し」で、去年の春に出会ったあなたにの意である。
三句「恋ひにてし」は、完了の「に」「て」と過去の「し」を重ね、恋い慕い続けていたことを表す。主語は四句の桜の花で、花を擬人化している。
四句「桜の花は」は、恋い慕う主体としての桜を示す。
結句「迎へけらしも」は、過去推定の「けらし」に詠嘆の「も」を添え、あなたを迎えて咲いたのだろうと推し量る。人を迎える桜という見立てに、宴の主客をたたえる予祝の心がうかがえる。
こふ:心ひかれて慕う、恋しく思う
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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明日よりは春菜摘まむと標めし野に 昨日も今日も雪は降りつつ
- 次の歌
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百済野の萩の古枝に春待つと 居りし鴬鳴きにけむかも