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茅花抜く浅茅が原のつほすみれ
今盛りなり我が恋ふらくは

歌の意味
茅花を抜く浅茅が原のつぼすみれのように、今が盛りである、私があなたを恋しく思う心は。
鑑賞
巻第八 春相聞 1449

詞書「大伴田村家の大嬢の妹坂上大嬢に与ふる歌一首」
 茅花を抜く野に咲き盛るつぼすみれを引き合いに、妹を恋しく思う気持ちが今まさに盛りだと詠む歌である。姉妹の間の親しい情を、恋の歌の形で表している。
 作者の大伴田村大嬢は、大伴宿奈麻呂の娘で、坂上大嬢の異母姉にあたる。田村の里に住んだことからこの名で呼ばれる。

 初句「茅花抜く」は、ちがやの花穂を抜き取る意で、春の野の情景を示す。
 二句「浅茅が原の」は、丈の低いちがやが生える野原である。
 三句「つほすみれ」は、初句からここまでが「盛り」を導く序詞となっている。本巻の第千四百四十四首も「つほすみれ」が「盛りなりけり」と詠まれ、同じ花の盛りを、そちらは実景として、この歌は恋の比喩として用いている。
 四句「今盛りなり」は、ここで句切れとなり、すみれの盛りと恋心の盛りを重ねる。
 結句「我が恋ふらくは」は、私が恋しく思うことはの意で、倒置によって主題を最後に明かしている。

つばな:ちがやの花穂
あさぢがはら:丈の低いちがやが生える野原
作者
大伴田村大嬢
出典
万葉集
前の歌
我がやどに蒔きしなでしこいつしかも 花に咲きなむなそへつつ見む
次の歌
心ぐきものにぞありける春霞 たなびく時に恋の繁きは