この花の一節のうちは百種の
言待ちかねて折らえけらずや
- 歌の意味
-
この花の一枝は、たくさんの言葉の重さに耐えかねて、折られてしまったのではありませんか。
- 鑑賞
-
巻第八 春相聞 1457
詞書「娘子の和ふる歌一首」
前歌で藤原広嗣が、花の一枝に百種の言葉がこもっていると詠んだのに対し、それほど多くの言葉を込められたので、枝が耐えきれずに折れてしまったのではないかと切り返した歌である。相手の大げさな言い方を軽く受け流す、機知に富んだ返しとなっている。
作者は題詞に「娘子」とあるのみで、名は伝わらない。広嗣から桜の花を贈られた女性である。
初句「この花の」は、前歌の初句をそのまま受けている。
二句「一節のうちは」も、前歌の「一節のうちに」を受け、助詞を「は」に変えて答えの主題を示す。
三句「百種の」も前歌と同じ言葉で、相手の言葉を逐一なぞりながら返している。
四句「言待ちかねて」は、原文の表記「持不勝」から、言葉の重さを持ちこたえきれずにの意に解される。
結句「折らえけらずや」は、受身の「らゆ」と過去の「けり」に反語の「や」を添え、折られてしまったのではないかと問い返している。
ひとよ:花枝の一節、一枝
ももくさ:さまざまなもの、多くの種類
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
この花の一節のうちに百種の 言ぞ隠れるおほろかにすな
- 次の歌
-
やどにある桜の花は今もかも 松風早み地に散るらむ