古典和歌stream

もののふの石瀬の社の霍公鳥
今も鳴かぬか山の常蔭に

歌の意味
石瀬の杜のほととぎすよ、今すぐにでも鳴いてくれないものか。山のいつも陰になっているあたりで。
鑑賞
巻第八 夏雑歌 1470

詞書「刀理宣令の歌一首」
 石瀬の杜のほととぎすに向かい、山の陰で今すぐにでも鳴いてほしいと願う歌である。ほととぎすの訪れを待ちわびる心が、打消の形をとった願望の言葉で表されている。
 作者の刀理宣令は、奈良時代の官人で、漢詩文にもすぐれ、『懐風藻』に詩を残している。

 初句「もののふの」は、「石瀬」にかかる枕詞である。
 二句「石瀬の社の」は、奈良県斑鳩町のあたりとされる森である。本巻の第千四百十九首、第千四百六十六首に続き、同じ杜の鳥を詠む三首目の歌となっている。
 三句「霍公鳥」は呼びかけである。第千四百六十六首と同じ初二句の型を受けて、同じ鳥を別の作者が詠み継いでいる。
 四句「今も鳴かぬか」は、打消の「ぬ」に「か」を添えた願望の表現で、今すぐ鳴いてくれないかと願う。ここで句切れとなる。
 結句「山の常蔭に」は、山のいつも日の当たらない陰になっている所での意で、倒置によって鳴いてほしい場所を最後に示している。

とかげ:いつも日の当たらない陰になっている所
作者
刀理宣令
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山霍公鳥汝が鳴けば 家なる妹し常に偲はゆ
次の歌
恋しけば形見にせむと我がやどに 植ゑし藤波今咲きにけり