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橘の花散る里の霍公鳥
片恋しつつ鳴く日しぞ多き

歌の意味
橘の花が散る里のほととぎすは、片思いをしながら鳴く日が多いことだ。
鑑賞
巻第八 夏雑歌 1473

詞書「大宰帥大伴卿の和ふる歌一首」
 前歌の石上堅魚の歌に答え、橘の花が散る里のほととぎすは、片思いをしながら鳴く日が多いと詠む歌である。散った橘の花を恋い慕って鳴き続けるほととぎすに、亡き妻を恋い続ける作者自身の悲しみを重ねている。
 作者の大伴旅人は、大伴安麻呂の子で、家持の父にあたる。大宰帥として筑紫に赴任し、のちに大納言に至った。

 初句「橘の」は、初夏に白い花を咲かせる橘である。前歌の卯の花を受け、同じく初夏の白い花を詠んでいる。
 二句「花散る里の」は、橘の花が散る里の意で、花の盛りが過ぎたことを示し、失われたものへの思いを暗示する。
 三句「霍公鳥」は、前歌と同じ鳥を受けて、そこに自らの姿を重ねている。
 四句「片恋しつつ」は、片思いをし続けながらの意で、応えてくれる相手がもういないことを示唆する。
 結句「鳴く日しぞ多き」は、強意の「し」と係助詞「ぞ」を受けて連体形「多き」で結ぶ係り結びで、泣き暮らす日の多さを強く言い表している。

かたこひ:片思い
作者
大伴旅人
出典
万葉集
前の歌
霍公鳥来鳴き響もす卯の花の 伴にや来しと問はましものを
次の歌
今もかも大城の山に霍公鳥 鳴き響むらむ我れなけれども