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卯の花もいまだ咲かねば霍公鳥
佐保の山辺に来鳴き響もす

歌の意味
卯の花もまだ咲いていないのに、ほととぎすが佐保の山辺にやって来て、鳴き声を響かせている。
鑑賞
巻第八 夏雑歌 1477

詞書「大伴家持の霍公鳥の歌一首」
 卯の花もまだ咲かない時期に、ほととぎすが早くも佐保の山辺に来て鳴いていると詠む歌である。ほととぎすと卯の花は連れ立って訪れるものとされていたため、花に先立って鳥が来た意外さと喜びが表されている。
 作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、奈良時代の官人である。中納言に至り、万葉集の編纂に深く関わったとされ、集中最も多くの歌を残す。

 初句「卯の花も」は、初夏に白い花をつけるうつぎの花である。
 二句「いまだ咲かねば」の「ねば」は、ここでは〜ないのにという逆接の意である。本巻の第千四百三十四首の「いまだ過ぎねば」と同じ用法である。
 三句「霍公鳥」は、卯の花に先立って訪れた鳥を示す。
 四句「佐保の山辺に」は、大伴氏の邸宅があった奈良の佐保の山辺である。
 結句「来鳴き響もす」は、来て鳴き声を響かせるの意である。本巻の第千四百七十二首は「来鳴き響もす卯の花の伴にや来し」と、ほととぎすと卯の花が連れ立つさまを詠んでおり、この歌は花がまだ咲かないのに鳥だけが来たという、それと対照的な情景を描いている。

うのはな:うつぎの花、初夏に白い花をつける
とよもす:声を響かせる
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
ひとり居て物思ふ宵に霍公鳥 こゆ鳴き渡る心しあるらし
次の歌
我が宿の花橘のいつしかも 玉に貫くべくその実なりなむ