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霍公鳥いたくな鳴きそひとり居て
寐の寝らえぬに聞けば苦しも

歌の意味
ほととぎすよ、そんなにひどく鳴かないでおくれ。一人でいて眠ることもできないのに、その声を聞くと苦しいから。
鑑賞
巻第八 夏雑歌 1484

詞書「大伴坂上郎女の歌一首」
 一人で眠れずにいる夜、ほととぎすの鳴く声がいっそうつらく聞こえるので、ひどく鳴かないでほしいと願う歌である。独り寝の寂しさとほととぎすの声とが重なり、恋しい人を思う心の苦しさが表されている。
 作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。大伴家持の叔母であり、のちに姑ともなった。万葉集に多くの歌を残す女性歌人である。

 初句「霍公鳥」は呼びかけである。
 二句「いたくな鳴きそ」は、「な〜そ」の禁止表現で、ひどく鳴かないでくれと願い、ここで句切れとなる。本巻の第千四百十九首、第千四百六十五首にも同じ句があり、鳥にひどく鳴かないでと呼びかける歌が春と夏に配されている。
 三句「ひとり居て」は、一人でいての意で、本巻の第千四百七十六首と同じ句である。そちらは鳥に心があると慰めを見いだし、この歌は鳥の声に苦しんでおり、同じ孤独の中での受けとめ方が対照をなしている。
 四句「寐の寝らえぬに」は、可能の「らゆ」の打消で、眠ることもできないのにの意である。
 結句「聞けば苦しも」は、聞くと苦しいことだと理由を示す。同じ結句は本巻の第千四百六十七首にもみえる。

い:眠ること、睡眠
作者
大伴坂上郎女
出典
万葉集
前の歌
我が背子が宿の橘花をよみ 鳴く霍公鳥見にぞ我が来し
次の歌
夏まけて咲きたるはねずひさかたの 雨うち降らば移ろひなむか