あしひきの木の間立ち潜く霍公鳥
かく聞きそめて後恋ひむかも
- 歌の意味
-
山の木の間をくぐって飛びかうほととぎすの声を、こうして聞き始めてしまって、あとできっと恋しく思うことだろう。
- 鑑賞
-
巻第八 夏雑歌 1495
詞書は前の歌に続き「大伴家持の霍公鳥の歌二首」
山の木々の間をくぐり抜けて鳴くほととぎすの声を聞き始めたが、こうして聞き慣れてしまうと、鳴かなくなったあとで恋しく思うだろうと詠む歌である。今の喜びの中に、やがて訪れる別れの寂しさを先取りしている。
作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、奈良時代の官人である。中納言に至り、万葉集の編纂に深く関わったとされ、集中最も多くの歌を残す。
初句「あしひきの」は、本来「山」にかかる枕詞で、ここでは山の木の間であることを示す。
二句「木の間立ち潜く」は、木々の間をくぐって飛ぶの意で、茂みを縫って飛ぶほととぎすの姿を描く。前歌の「木末の茂」を受けて、同じ夏山の鳥を近くからとらえている。
三句「霍公鳥」は、木の間を飛ぶ鳥を示す。
四句「かく聞きそめて」は、このように聞き始めての意である。
結句「後恋ひむかも」は、推量の「む」に「かも」を添え、あとで恋しく思うだろうと予感している。
たちくく:木の間などをくぐって飛ぶ
- 作者
-
大伴家持
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
夏山の木末の茂に霍公鳥 鳴き響むなる声の遥けさ
- 次の歌
-
我が宿のなでしこの花盛りなり 手折りて一目見せむ子もがも