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我が宿のなでしこの花盛りなり
手折りて一目見せむ子もがも

歌の意味
我が家の庭のなでしこの花が盛りである。手折って、一目見せてやる娘がいればよいのに。
鑑賞
巻第八 夏雑歌 1496

詞書「大伴家持の石竹の花の歌一首」
 庭のなでしこが盛りを迎えたが、手折って見せてやる恋しい娘がそばにいないことを嘆く歌である。花の美しさを分かち合う相手を求める心が、願望の言葉で表されている。
 作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、奈良時代の官人である。中納言に至り、万葉集の編纂に深く関わったとされ、集中最も多くの歌を残す。

 初句「我が宿の」は、自分の家の庭を示す。
 二句「なでしこの花」は、淡紅色の可憐な花で、恋しい娘の面影を重ねる花としてしばしば詠まれる。
 三句「盛りなり」は、花の盛りであると言い切り、ここで句切れとなる。
 四句「手折りて一目」は、手折って一目なりともの意で、せめて少しでも見せたいという気持ちを表す。
 結句「見せむ子もがも」は、願望の「もがも」で、見せてやる娘がいればよいのにと願う。本巻の第千五百四十二首の大伴旅人の歌も、散りそうな萩について「見む人もがも」と結んでおり、花の盛りを分かち合う相手を求める心が共通している。

なでしこ:淡紅色の花をつける草、秋の七草の一つ
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
あしひきの木の間立ち潜く霍公鳥 かく聞きそめて後恋ひむかも
次の歌
筑波嶺に我が行けりせば霍公鳥 山彦響め鳴かましやそれ