夏の野の茂みに咲ける姫百合の
知らえぬ恋は苦しきものぞ
- 歌の意味
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夏の野の茂みにひっそりと咲いている姫百合のように、相手に知られない恋は苦しいものだ。
- 鑑賞
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巻第八 夏相聞 1500
詞書「大伴坂上郎女の歌一首」
夏の野の茂みに隠れて咲く姫百合を引き合いに、相手に知られないまま胸に秘めた恋のつらさを詠んだ歌である。草に埋もれて人目につかない小さな花に、ひそかな恋心を重ねた比喩が美しく、坂上郎女の代表作の一つとして知られる。
作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。大伴家持の叔母であり、のちに姑ともなった。万葉集に多くの歌を残す女性歌人である。
初句「夏の野の」は字余りで、夏草の生い茂る野を示す。
二句「茂みに咲ける」は、草の茂みの中に咲いているの意である。
三句「姫百合の」は、夏に赤や橙の小さな花をつける百合である。初句からここまでが「知らえぬ」を導く序詞となっている。本巻の第千五百三首も百合を詠むが、そちらは「ゆり」の音を用いた機知の歌で、同じ花を比喩と言葉遊びの両面から扱っている。
四句「知らえぬ恋は」は、受身の「らゆ」の打消で、相手に知られない恋はの意である。茂みに隠れた百合の姿と重ねられている。
結句「苦しきものぞ」は、係助詞「ぞ」で、苦しいものだと強く言い切っている。
ひめゆり:夏に赤や橙の小さな花をつける百合
- 作者
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大伴坂上郎女
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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言繁み君は来まさず霍公鳥 汝れだに来鳴け朝戸開かむ
- 次の歌
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霍公鳥鳴く峰の上の卯の花の 憂きことあれや君が来まさぬ