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霍公鳥鳴く峰の上の卯の花の
憂きことあれや君が来まさぬ

歌の意味
ほととぎすが鳴く峰の上の卯の花の「う」ではないが、何かつらいことでもあるのだろうか、あなたがおいでにならないのは。
鑑賞
巻第八 夏相聞 1501

詞書「小治田朝臣広耳の歌一首」
 ほととぎすの鳴く峰に咲く卯の花の「う」の音から「憂き」を導き、何かつらいことでもあって来てくれないのだろうかと、訪れない相手を案じ、恨む歌である。待つ女性の立場で詠まれたものと解されている。
 作者の小治田広耳は、奈良時代の官人で、伝は未詳である。

 初句「霍公鳥」は、初夏の景を示す。
 二句「鳴く峰の上の」は、ほととぎすが鳴く峰の上の意である。
 三句「卯の花の」は、初句からここまでが、同じ音の繰り返しで「憂き」を導く序詞となっている。ほととぎすと卯の花という初夏の景物を用いて、恋の嘆きへとつなげている。
 四句「憂きことあれや」は、已然形「あれ」に疑問の「や」が付いた形で、つらいことがあるからだろうかと推し量る。
 結句「君が来まさぬ」は、四句の「や」を受けて連体形で結び、あなたがおいでにならないことを嘆く。本巻の第千四百九十八首、第千四百九十九首と同じく、訪れない人を待つ心が詠まれている。

をのうへ:峰の上、山の頂
うのはな:うつぎの花、初夏に白い花をつける
作者
小治田広耳
出典
万葉集
前の歌
夏の野の茂みに咲ける姫百合の 知らえぬ恋は苦しきものぞ
次の歌
五月の花橘を君がため 玉にこそ貫け散らまく惜しみ