望ぐたち清き月夜に我妹子に
見せむと思ひしやどの橘
- 歌の意味
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満月を過ぎた清らかな月夜に、あなたに見せようと思っていた我が家の庭の橘の花よ。
- 鑑賞
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巻第八 夏相聞 1508
詞書は前の歌に続き「大伴家持の橘の花を攀ぢて坂上大嬢に贈る歌一首[并せて短歌]」の反歌
満月を過ぎた清らかな月夜に、恋しい人に見せようと思っていた庭の橘を詠む歌である。長歌である第千五百七首の反歌で、長歌がほととぎすに散らされまいと守ってきた橘を手折って贈ると詠んだのを受け、見せたかった月夜の橘の美しさを思い返している。
作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、奈良時代の官人である。中納言に至り、万葉集の編纂に深く関わったとされ、集中最も多くの歌を残す。歌を贈った坂上大嬢は、大伴坂上郎女の娘で家持のいとこにあたり、のちに家持の妻となった。
初句「望ぐたち」は、満月を過ぎて月が欠け始める頃の意である。
二句「清き月夜に」は、清らかに澄んだ月夜にの意で、月光に照らされた白い橘の花の美しさを思わせる。
三句「我妹子に」は、恋しい女性、ここでは坂上大嬢を指す。
四句「見せむと思ひし」は、見せようと思っていたの意である。本巻の第千四百二十六首の山部赤人の歌にも同じ句があり、そちらは雪にまぎれた梅、この歌は月夜の橘と、見せたかった花が春と夏とで対応している。
結句「やどの橘」は体言止めで、見せたかった橘を最後に示し、かなわなかった思いを余韻として残している。
もちぐたち:満月を過ぎて月が欠け始める頃
わぎもこ:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
- 作者
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大伴家持
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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故郷の奈良思の岡の霍公鳥 言告げ遣りしいかに告げきや
- 次の歌
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妹が見て後も鳴かなむ霍公鳥 花橘を地に散らしつ