秋山にもみつ木の葉のうつりなば
さらにや秋を見まく欲りせむ
- 歌の意味
-
秋山に色づいた木の葉が散ってしまったならば、いっそう秋を見たいと思うことだろうか。
- 鑑賞
-
巻第八 秋雑歌 1516
詞書「山部王の秋葉を惜しむ歌一首」
秋山の色づいた木の葉が散ってしまったら、なおいっそう秋を見たいと恋しく思うことだろうと、黄葉の散るのを惜しむ歌である。まだ黄葉が美しいうちから、それが失われたあとの思いを先取りしている。
作者の山部王は奈良時代の皇族で、伝は明らかでない。
初句「秋山に」は、黄葉に彩られた秋の山を示す。
二句「もみつ木の葉の」は、色づいた木の葉の意である。
三句「うつりなば」は、完了の「な」に「ば」が付いた仮定で、散ってしまったならばの意である。
四句「さらにや秋を」は、疑問の「や」で、いっそう秋をと推し量る心を導く。
結句「見まく欲りせむ」は、見ることを望むだろうの意で、四句の「や」を受けて連体形で結ぶ。本巻の第千四百九十五首が、聞き始めたほととぎすを後で恋しく思うだろうと詠んだのと同じく、今の美しさを失ったあとの恋しさを予感している。
もみつ:木の葉が色づく
うつる:色あせる、散る
- 作者
-
山部王
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
言繁き里に住まずは今朝鳴きし 雁にたぐひて行かましものを
- 次の歌
-
味酒三輪のはふりの山照らす 秋の黄葉の散らまく惜しも