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彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし
天の川原に霧の立てるは

歌の意味
彦星の妻を迎えに行く舟が漕ぎ出したらしい。天の川原に霧が立ちこめているのは。
鑑賞
巻第八 秋雑歌 1527

詞書は前の歌に続き「山上臣憶良の七夕の歌十二首」
 天の川原に霧が立ちこめているのを見て、彦星が妻を迎える舟を漕ぎ出したらしいと推し量る歌である。立ちこめる霧を、舟を漕ぐ櫂のしぶきが立てたものと見立てる、美しい想像の一首である。
 作者の山上憶良は奈良時代前期の官人で歌人である。遣唐使の一員として唐に渡り、のちに筑前守となった。人生や社会を見つめた歌で知られる。

 初句「彦星の」は、牽牛星を指す。
 二句「妻迎へ舟」は、妻の織女を迎えに行く舟である。
 三句「漕ぎ出らし」は、推定の「らし」で、漕ぎ出したらしいと推し量り、ここで句切れとなる。
 四句「天の川原に」は、天の川の川原にの意である。
 結句「霧の立てるは」は、存続の「り」の連体形に「は」を添え、霧が立ちこめているのはと、推定の根拠を倒置によって示している。次歌では、同じ天の川原に霞が立つ中で織女が彦星を待つ姿が詠まれ、迎える側と待つ側とが二首で対をなしている。

つまむかへぶね:妻を迎えに行く舟
作者
山上憶良
出典
万葉集
前の歌
玉かぎるほのかに見えて別れなば もとなや恋ひむ逢ふ時までは
次の歌
霞立つ天の川原に君待つと い行き帰るに裳の裾濡れぬ