妹がりと我が行く道の川しあれば
つくめ結ぶと夜ぞ更けにける
- 歌の意味
-
妻のもとへと私が行く道には川があるので、つくめを結んでいるうちに、夜が更けてしまった。
- 鑑賞
-
巻第八 秋雑歌 1546
詞書「市原王の七夕の歌一首」
妻のもとへ行く道に川があるので、つくめを結んで渡る支度をしているうちに夜が更けてしまったと、彦星の立場で詠んだ歌である。逢瀬を前に、渡る手間に時を取られてしまうもどかしさが表されている。
作者の市原王は、安貴王の子で、奈良時代の皇族である。造東大寺長官などを務めた。
初句「妹がりと」は、妻のもとへとの意である。
二句「我が行く道の」は、私が行く道のの意である。
三句「川しあれば」は、強意の「し」で、川があるのでと理由を示す。天の川を指している。
四句「つくめ結ぶと」の「つくめ」は語義未詳で、舟や筏をつなぐものとも、川を渡るための仕掛けともいわれる。
結句「夜ぞ更けにける」は、係助詞「ぞ」を受けて詠嘆の「けり」の連体形「ける」で結ぶ係り結びで、夜が更けてしまったことを嘆く。前の第千五百四十四首の湯原王の歌も「夜の更けゆけば」と、七夕の夜の更けゆくことを詠んでいる。
いもがり:妻や恋人のもと
つくめ:語義未詳、舟や筏をつなぐものとも、川を渡るための仕掛けともいわれる
- 作者
-
市原王
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
織女の袖継ぐ宵の暁は 川瀬の鶴は鳴かずともよし
- 次の歌
-
咲く花もをそろはいとはしおくてなる 長き心になほしかずけり