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秋立ちて幾日もあらねばこの寝ぬる
朝明の風は手本寒しも

歌の意味
立秋から幾日もたっていないのに、この寝て起きた明け方の風は、袂に寒く感じられることだ。
鑑賞
巻第八 秋雑歌 1555

詞書「安貴王の歌一首」
 立秋からまだ幾日もたっていないのに、一夜寝て起きた明け方の風が、はや袂に寒く感じられると詠む歌である。暦の上の秋と、肌に感じる秋の訪れとをとらえ、独り寝の寂しさもほのかに感じさせる。
 作者の安貴王は、志貴皇子の孫で、市原王の父にあたる奈良時代の皇族である。

 初句「秋立ちて」は、立秋を迎えての意である。
 二句「幾日もあらねば」の「ねば」は、ここでは〜ないのにという逆接の意である。
 三句「この寝ぬる」は字余りで、この一夜寝たの意である。
 四句「朝明の風は」は、明け方に吹く風である。
 結句「手本寒しも」は、詠嘆の「も」で、袂に寒さを感じることを表している。袂の寒さには、共寝する人のいない寂しさを読み取ることもできる。

たもと:袖、袂
あさけ:夜明け、明け方
作者
安貴王
出典
万葉集
前の歌
大君の御笠の山の黄葉は 今日の時雨に散りか過ぎなむ
次の歌
秋田刈る仮廬もいまだ壊たねば 雁が音寒し霜も置きぬがに