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妹が目を始見の崎の秋萩は
この月ごろは散りこすなゆめ

歌の意味
始見の崎の秋萩よ、この幾月かの間は、決して散ってくれるな。
鑑賞
巻第八 秋雑歌 1560

詞書「大伴坂上郎女の跡見の田庄にして作る歌二首」
 始見の崎に咲く秋萩に向かい、自分がここにいるこの幾月かの間は、決して散らないでほしいと願う歌である。大伴氏の所領である跡見の田荘に滞在していた作者が、その地の萩をいとおしんで詠んだものである。
 作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。大伴家持の叔母であり、のちに姑ともなった。万葉集に多くの歌を残す女性歌人である。跡見は奈良県桜井市のあたりの地である。
 なお読み仮名の行では「始見」の読みが欠けており、一般に「はつみ」と読まれている。

 初句「妹が目を」は、恋しい人の顔を初めて見るの意から、「始見」を導く枕詞のような働きをしている。
 二句「始見の崎の」は、跡見のあたりの地名とみられる。
 三句「秋萩は」は、崎に咲く秋萩への呼びかけとなっている。
 四句「この月ごろは」は、この幾月かの間はの意で、作者が田荘に滞在している期間を指す。
 結句「散りこすなゆめ」は、希望の「こす」に禁止の「な」を重ね、副詞「ゆめ」で強めて、決して散ってくれるなと願う。同じ結句は本巻の第千四百三十七首にもあり、そちらは春日の梅、この歌は始見の萩と、春と秋とで花に散らないでと願う歌が呼応している。

つきごろ:幾月かの間、この数か月
作者
大伴坂上郎女
出典
万葉集
前の歌
秋萩は盛り過ぐるをいたづらに かざしに挿さず帰りなむとや
次の歌
吉隠の猪養の山に伏す鹿の 妻呼ぶ声を聞くが羨しさ