- 歌の意味
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吉隠の猪養の山に伏している鹿が、妻を呼ぶ声を聞くと、なんとうらやましく思われることか。
- 鑑賞
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巻第八 秋雑歌 1561
詞書は前の歌に続き「大伴坂上郎女の跡見の田庄にして作る歌二首」
吉隠の猪養の山で妻を呼んで鳴く鹿の声を聞き、呼ぶべき相手のいる鹿がうらやましいと詠む歌である。田荘に滞在して人恋しい作者が、恋しい相手を呼ぶことのできる鹿の姿に、自らの寂しさを重ねている。
作者の大伴坂上郎女は、大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。大伴家持の叔母であり、のちに姑ともなった。万葉集に多くの歌を残す女性歌人である。
初句「吉隠の」は、奈良県桜井市の地名で、跡見の田荘に近い地である。
二句「猪養の山に」は、吉隠にある山である。
三句「伏す鹿の」は、山に伏している鹿のの意である。
四句「妻呼ぶ声を」は、妻を呼んで鳴く鹿の声である。本巻の第千四百四十六首の雉の「妻恋ひ」と同じく、妻を求める鳥獣の声が詠まれている。
結句「聞くが羨しさ」は体言止めで、「羨し」はうらやましいの意である。次歌の第千五百六十二首も、妻を呼ぶ雁の声を「羨しくもあるか」と詠んでおり、鹿と雁の妻呼ぶ声をうらやむ歌が続けて配されている。
よなばり:奈良県桜井市の地名
ゐかひのやま:吉隠にある山
- 作者
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大伴坂上郎女
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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妹が目を始見の崎の秋萩は この月ごろは散りこすなゆめ
- 次の歌
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誰れ聞きつこゆ鳴き渡る雁がねの 妻呼ぶ声の羨しくもあるか