雨隠り心いぶせみ出で見れば
春日の山は色づきにけり
- 歌の意味
-
雨で家にこもって気がふさいでいたので、外に出て見ると、春日の山はすっかり色づいていた。
- 鑑賞
-
巻第八 秋雑歌 1568
詞書は前の歌に続き「大伴家持の秋の歌四首」
雨で家にこもり、気がふさいでいたので外に出て見ると、春日山がすっかり色づいていたと詠む歌である。長雨の間に季節が移っていたことに気づいた驚きと、晴れやかな景色に心がほぐれる思いが表されている。左注により、天平八年(736)秋九月の作である。
作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、奈良時代の官人である。中納言に至り、万葉集の編纂に深く関わったとされ、集中最も多くの歌を残す。
初句「雨隠り」は、雨のために家にこもることである。
二句「心いぶせみ」は、「いぶせし」に「み」が付いた形で、気がふさぐのでの意である。
三句「出で見れば」は、外に出て見るとの意である。本巻の第千五百七十首の藤原八束の歌は、雨にさえぎられて出かけられない恋しさを詠み、外へ出て景色を見るこの歌と対照をなしている。
四句「春日の山は」は、奈良の春日山である。
結句「色づきにけり」は、完了の「に」と詠嘆の「けり」で、色づいていたことへの驚きを表す。本巻の第千五百五十三首の大伴稲公の歌も同じ結句で、時雨に色づいた御笠山を詠んでいる。
あまごもり:雨のために家にこもること
- 作者
-
大伴家持
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
雲隠り鳴くなる雁の行きて居む 秋田の穂立繁くし思ほゆ
- 次の歌
-
雨晴れて清く照りたるこの月夜 またさらにして雲なたなびき