雲の上に鳴くなる雁の遠けども
君に逢はむとた廻り来つ
- 歌の意味
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雲の上で鳴いている雁のように遠い道のりだけれども、あなたにお逢いしようと、回り道をしてやって来た。
- 鑑賞
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巻第八 秋雑歌 1574
詞書「右大臣橘家の宴の歌七首」
雲の上で鳴く雁のように遠い道のりではあるが、あなたにお逢いしたくて、回り道をしてまでやって来たと詠む歌である。右大臣橘諸兄の邸宅での宴で、主人への敬意と訪問の喜びを表した挨拶の歌である。左注に「天平十年(738)八月二十日」とあり、この日の宴の七首の最初の歌である。
左注には「右二首」とあるのみで作者の名が欠けており、作者は伝わらない。宴の主人の橘諸兄は、美努王の子で、母は県犬養三千代である。臣籍に降下して橘姓を名乗り、右大臣、のちに左大臣に至った。
初句「雲の上に」は字余りで、雲の上の高く遠い所を示す。
二句「鳴くなる雁の」の「なる」は、音によって推定する助動詞である。初句と二句が「遠け」を導く序詞となっている。
三句「遠けども」は、遠いけれどもの意である。
四句「君に逢はむと」は、あなたにお逢いしようとの意で、宴の主人を指す。
結句「た廻り来つ」の「た廻る」は、回り道をする、行きつ戻りつするの意で、完了の「つ」で結ぶ。遠い道のりをいとわず訪れたことを示し、主人への敬意を表している。次歌も「雲の上に」で始まり、同じ宴の二首が同じ句で並んでいる。
たもとほる:回り道をする、行きつ戻りつする
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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秋の雨に濡れつつ居ればいやしけど 我妹が宿し思ほゆるかも
- 次の歌
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雲の上に鳴きつる雁の寒きなへ 萩の下葉はもみちぬるかも