さを鹿の来立ち鳴く野の秋萩は
露霜負ひて散りにしものを
- 歌の意味
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雄鹿が来て立ち鳴く野の秋萩は、冷たい露を受けて、もう散ってしまったのになあ。
- 鑑賞
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巻第八 秋雑歌 1580
詞書は前の歌に続き「右大臣橘家の宴の歌七首」
雄鹿が来て立ち鳴く野の秋萩は、冷たい露を受けてもう散ってしまったと詠む歌である。鹿が妻として慕う萩の花が散ったことを惜しみ、秋の深まりとその寂しさを表している。左注に「右二首は、文忌寸馬養」とあり、さらに「天平十年(738)八月二十日」とあって、この宴の七首がここで終わる。
作者の文馬養は、渡来系氏族である文氏の官人である。
初句「さを鹿の」は、雄鹿のの意で、「さ」は接頭語である。
二句「来立ち鳴く野の」は、来て立ち鳴く野のの意である。本巻の第千五百四十一首の大伴旅人の歌も、萩の花を妻として求めて来鳴く雄鹿を詠んでいる。
三句「秋萩は」は、鹿が慕う萩を示す。
四句「露霜負ひて」は、冷たい露を受けての意で、「露霜」は霜のように冷たい露をいう。
結句「散りにしものを」は、完了の「に」、過去の「き」の連体形「し」、詠嘆の「ものを」で、散ってしまったのになあと惜しんでいる。
つゆしも:霜のように冷たい露
さをしか:雄鹿、「さ」は接頭語
- 作者
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文馬養
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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朝戸開けて物思ふ時に白露の 置ける秋萩見えつつもとな
- 次の歌
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手折らずて散りなば惜しと我が思ひし 秋の黄葉をかざしつるかも