黄葉を散らす時雨に濡れて来て
君が黄葉をかざしつるかも
- 歌の意味
-
黄葉を散らす時雨に濡れながらやって来て、あなたの手折った黄葉を髪に挿したことだ。
- 鑑賞
-
巻第八 秋雑歌 1583
詞書は前の歌に続き「橘朝臣奈良麻呂の集宴を結ぶ歌十一首」
黄葉を散らす時雨に濡れながらやって来て、主人の手折った黄葉を髪に挿したと詠む歌である。前歌で主人の奈良麻呂が雨の中を黄葉を手折って来たと詠んだのに答え、客の立場から、その心づくしを受けた喜びを表している。左注に「右一首は、久米女王」とある。
作者の久米女王は奈良時代の女性皇族で、伝は未詳である。
初句「黄葉を」は、時雨に散らされる黄葉を示す。
二句「散らす時雨に」は、黄葉を散らす時雨にの意で、前歌の「雨の降らくに」を受けている。
三句「濡れて来て」は、濡れながらやって来ての意で、客もまた雨をいとわず訪れたことを示す。
四句「君が黄葉を」は、あなたの黄葉をの意で、主人が手折った黄葉を指す。初句と四句に「黄葉」を重ね、散らされる黄葉と主人の黄葉とを対比させている。
結句「かざしつるかも」は、完了の「つ」と詠嘆の「かも」で、黄葉を挿した喜びを表す。本巻の第千五百八十一首の奈良麻呂の歌と同じ結句で、主客の歌が同じ言葉で響き合っている。
しぐれ:秋から冬にかけて降ったりやんだりする雨
かざす:花や枝を髪や冠に挿して飾る
- 作者
-
久米女王
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
めづらしき人に見せむと黄葉を 手折りぞ我が来し雨の降らくに
- 次の歌
-
めづらしと我が思ふ君は秋山の 初黄葉に似てこそありけれ