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奈良山の嶺の黄葉取れば散る
時雨の雨し間なく降るらし

歌の意味
奈良山の峰の黄葉は、手に取るとすぐに散ってしまう。時雨の雨が絶え間なく降っているらしい。
鑑賞
巻第八 秋雑歌 1585

詞書は前の歌に続き「橘朝臣奈良麻呂の集宴を結ぶ歌十一首」
 宴に持ち込まれた奈良山の峰の黄葉が、手に取るとすぐに散ってしまうのを見て、山では時雨が絶え間なく降っているらしいと推し量る歌である。手もとの黄葉のもろさから、遠い山の時雨を思いやっている。左注に「右一首は、内舎人県犬養宿禰吉男」とある。
 作者の県犬養吉男は、内舎人を務めた奈良時代の官人である。

 初句「奈良山の」は、奈良の都の北にある山である。
 二句「嶺の黄葉」は、奈良山の峰の黄葉である。
 三句「取れば散る」は、手に取ると散ってしまうと言い切り、ここで句切れとなる。
 四句「時雨の雨し」は字余りで、強意の「し」で時雨の雨をと強調する。
 結句「間なく降るらし」は、推定の「らし」で、絶え間なく降っているらしいと推し量る。本巻の第千五百五十三首の大伴稲公の歌も「時雨の雨間なくし降れば」と、同じく絶え間ない時雨を詠んでいる。

しぐれ:秋から冬にかけて降ったりやんだりする雨
もみちば:色づいた木の葉
作者
県犬養吉男
出典
万葉集
前の歌
めづらしと我が思ふ君は秋山の 初黄葉に似てこそありけれ
次の歌
黄葉を散らまく惜しみ手折り来て 今夜かざしつ何か思はむ