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時雨の雨間なくな降りそ紅に
にほへる山の散らまく惜しも

歌の意味
時雨の雨よ、絶え間なく降らないでおくれ。紅色に照り映えている山の黄葉が散ってしまうのが惜しいから。
鑑賞
巻第八 秋雑歌 1594

詞書「仏前の唱歌一首」
 時雨の雨に、絶え間なく降らないでほしい、紅色に照り映える山の黄葉が散ってしまうのが惜しいと願う歌である。左注によれば、冬十月、皇后宮で維摩講が行われた際、終日、唐や高麗などのさまざまな音楽を仏に供養し、その中でこの歌詞を唱えたという。琴を弾いたのは市原王と忍坂王で、歌い手は田口朝臣家守、河辺朝臣東人、置始連長谷ら十数人であった。仏前で唱えられた歌として、宮廷の文化を伝える貴重な一首である。
 作者は伝わらない。皇后宮は光明皇后の宮で、維摩講は維摩経を講ずる法会である。

 初句「時雨の雨」は字余りで、木の葉を色づかせ、また散らしもする時雨である。
 二句「間なくな降りそ」は、「な〜そ」の禁止表現で、絶え間なく降らないでくれと願い、ここで句切れとなる。本巻の第千五百五十三首、第千五百八十五首では、時雨が「間なく」降るさまが詠まれている。
 三句「紅に」は、鮮やかな赤色にの意である。
 四句「にほへる山の」は、照り映えている山のの意で、黄葉に彩られた山を示す。
 結句「散らまく惜しも」は、散ってしまうのが惜しいの意で、詠嘆の「も」で結ぶ。本巻の第千五百十七首の長屋王の歌も同じ結句で、三輪山の黄葉の散るのを惜しんでいる。

くれなゐ:鮮やかな赤色
ゆいまかう:維摩経を講じる法会
出典
万葉集
前の歌
隠口の泊瀬の山は色づきぬ 時雨の雨は降りにけらしも
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秋萩の枝もとををに置く露の 消なば消ぬとも色に出でめやも