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妻恋ひに鹿鳴く山辺の秋萩は
露霜寒み盛り過ぎゆく

歌の意味
妻を恋うて鹿が鳴く山辺の秋萩は、冷たい露が寒いので、盛りが過ぎていく。
鑑賞
巻第八 秋雑歌 1600

詞書「内舎人石川朝臣広成の歌二首」
 妻を恋うて鹿が鳴く山辺の秋萩は、冷たい露の寒さのために盛りを過ぎていくと詠む歌である。鹿の声と萩の衰えとが重なり、深まる秋のもの寂しさが表されている。
 作者の石川広成は、内舎人を務めた奈良時代の官人である。

 初句「妻恋ひに」は、妻を恋い慕っての意である。
 二句「鹿鳴く山辺の」は、鹿の鳴く山辺のの意である。初句と二句は本巻の第千六百二首の大伴家持の歌の「妻恋ひに鹿鳴く山辺に」と同じ言葉で、同じ情景を萩の衰えとひとりの寂しさとに詠み分けている。
 三句「秋萩は」は、山辺に咲く秋萩を示す。
 四句「露霜寒み」は、「〜み」の形で、冷たい露が寒いのでの意である。
 結句「盛り過ぎゆく」は、盛りが過ぎていくと言い切り、萩の衰えを惜しむ心を表している。

つゆしも:霜のように冷たい露
作者
石川広成
出典
万葉集
前の歌
さを鹿の胸別けにかも秋萩の 散り過ぎにける盛りかも去ぬる
次の歌
めづらしき君が家なる花すすき 穂に出づる秋の過ぐらく惜しも