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君待つと我が恋ひをれば我が宿の
簾動かし秋の風吹く

歌の意味
あなたのおいでを待って、私が恋しく思っていると、我が家の簾を動かして、秋の風が吹いてくる。
鑑賞
巻第八 秋相聞 1606

詞書「額田王の近江天皇を思ひて作る歌一首」
 天智天皇の訪れを待ちこがれていると、家の簾を動かして秋の風が吹いてきたと詠む歌である。簾が揺れた瞬間、恋しい人が来たかと思ったが、それは秋風であったという、待つ身の心の揺れと寂しさが繊細に表されている。秋相聞の巻頭に置かれ、万葉集を代表する恋の歌として名高い。巻第四の第四百八十八首にも同じ歌が収められている。
 作者の額田王は、万葉集初期を代表する女性歌人である。天武天皇との間に十市皇女を生み、のちに天智天皇に仕えたとされる。

 初句「君待つと」は、あなたを待つといっての意で、「君」は近江の大津宮にあった天智天皇を指す。
 二句「我が恋ひをれば」は、私が恋しく思っているとの意である。
 三句「我が宿の」は、自分の家のの意である。
 四句「簾動かし」は、簾を揺り動かしての意で、人の訪れかと思わせる。
 結句「秋の風吹く」は、秋の風が吹くと言い切り、訪れたのが恋人ではなく風であったことを示して寂しさを残す。本巻の第千五百三十五首の藤原宇合の歌も同じ結句で、待つ女性の心を詠んでおり、秋雑歌と秋相聞とで同じ結句の歌が呼応している。

すだれ:竹やあしを編んで窓や戸口に掛けたもの
作者
額田王
出典
万葉集
前の歌
高円の野辺の秋萩このころの 暁露に咲きにけむかも
次の歌
風をだに恋ふるは羨し風をだに 来むとし待たば何か嘆かむ