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我が宿の時じき藤のめづらしく
今も見てしか妹が笑まひを

歌の意味
我が家の庭に季節はずれに咲いた藤の花がめずらしいように、心ひかれるあなたの笑顔を、今すぐにでも見たいものだ。
鑑賞
巻第八 秋相聞 1627

詞書「大伴宿禰家持の非時の藤の花并せて萩の黄葉の二つの物を攀ぢて坂上大嬢に贈る歌二首」
 庭に季節はずれに咲いた藤の花を贈り、その花がめずらしいように、心ひかれるあなたの笑顔を今すぐにでも見たいと詠む歌である。季節はずれの花の珍しさを、恋しい人の笑顔の慕わしさに重ねている。左注に「右二首は、天平十二年(740)夏六月に往来す」とある。
 作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、奈良時代の官人である。中納言に至り、万葉集の編纂に深く関わったとされ、集中最も多くの歌を残す。歌を贈った坂上大嬢は、大伴坂上郎女の娘で家持のいとこにあたり、のちに家持の妻となった。

 初句「我が宿の」は、自分の家の庭を示す。
 二句「時じき藤の」の「時じ」は、その時節ではないの意で、季節はずれに咲いた藤である。
 三句「めづらしく」は、めずらしく心ひかれるの意で、初句からここまでが、藤の珍しさから相手の慕わしさへと導いている。
 四句「今も見てしか」は、願望の「てしか」で、今すぐにでも見たいと願う。本巻の第千六百二十二首の田村大嬢の歌にも同じ句があり、同じ坂上大嬢に向けて、姉と恋人とが同じ言葉で会いたい心を詠んでいる。
 結句「妹が笑まひを」は、あなたの笑顔をの意で、倒置によって見たいものを最後に示している。

ゑまひ:笑顔、ほほえみ
作者
大伴家持
出典
万葉集
前の歌
秋風の寒きこのころ下に着む 妹が形見とかつも偲はむ
次の歌
我が宿の萩の下葉は秋風も いまだ吹かねばかくぞもみてる