衣手に水渋付くまで植ゑし田を
引板我が延へまもれる苦し
- 歌の意味
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袖に水の錆が付くほど苦労して植えた田を、鳴子の綱を張りめぐらして見張っているのは、つらいことだ。
- 鑑賞
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巻第八 秋相聞 1634
詞書は前の歌に続き「或る者の尼に贈る歌二首」
袖に水の錆が付くほど苦労して植えた田を、鳥獣を追い払う鳴子の綱を張りめぐらして見張り続けるのはつらいと詠む歌である。田を大切に育てた娘にたとえ、その娘を守り続ける親の苦労を詠んだものとする説がある。
作者は題詞に「或る者」とあるのみで、名は伝わらない。
初句「衣手に」は、袖にの意である。
二句「水渋付くまで」は、水に浮かぶ錆のようなものが袖に付くほどにの意で、田植えの苦労を具体的に示している。
三句「植ゑし田を」は、植えた田をの意である。次歌の第千六百三十五首の上の句も「植ゑし田を」で終わっており、同じ言葉で歌が連なっている。
四句「引板我が延へ」は、鳴子の綱を私が張りめぐらしての意である。
結句「まもれる苦し」は、見張っているのがつらいの意で、存続の「り」で守り続けるさまを示して結んでいる。
みしぶ:水に浮かぶ赤茶色の錆のようなもの
ひきた:鳥獣を追い払うために田に張る鳴子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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手もすまに植ゑし萩にやかへりては 見れども飽かず心尽さむ
- 次の歌
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佐保川の水を堰き上げて植ゑし田を 刈れる初飯はひとりなるべし