古典和歌stream

大口の真神の原に降る雪は
いたくな降りそ家もあらなくに

歌の意味
真神の原に降る雪よ、そんなにひどく降らないでおくれ。身を寄せる家もないのだから。
鑑賞
巻第八 冬雑歌 1636

詞書「舎人娘子の雪の歌一首」
 真神の原に降る雪に向かい、身を寄せる家もないのだから、ひどく降らないでほしいと願う歌である。人家のない広い原で雪に降りこめられる旅の心細さが、雪への呼びかけによって表されている。冬雑歌の巻頭に置かれている。
 作者の舎人娘子は、伝の未詳な女性である。

 初句「大口の」は、大きな口をもつ狼を「真神」と呼んだことから、「真神」にかかる枕詞である。
 二句「真神の原に」は、飛鳥の地の原で、人家の少ない広い野であった。
 三句「降る雪は」は、原に降りしきる雪である。
 四句「いたくな降りそ」は、「な〜そ」の禁止表現で、ひどく降らないでくれと願い、ここで句切れとなる。本巻の第千四百十九首、第千四百六十五首、第千四百八十四首の「いたくな鳴きそ」と同じ形で、春夏には鳥に、冬には雪に呼びかける歌が配されている。
 結句「家もあらなくに」は、「なくに」で、家もないのにと理由を示し、旅の心細さを余韻として残している。

まかみのはら:飛鳥の地にあった原
作者
舎人娘子
出典
万葉集
前の歌
佐保川の水を堰き上げて植ゑし田を 刈れる初飯はひとりなるべし
次の歌
はだすすき尾花逆葺き黒木もち 造れる室は万代までに