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あをによし奈良の山なる黒木もち
造れる室は座せど飽かぬかも

歌の意味
奈良の山の皮のついたままの黒木で造ったこの室は、いくらいても飽きることがない。
鑑賞
巻第八 冬雑歌 1638

詞書「天皇の御製歌一首」
 奈良の山の黒木で造った室は、いくらいても飽きることがないとたたえる御製である。左注に「右は、聞くならく、左大臣長屋王の佐保の宅に御在して肆宴したまふ御製なり」とあり、長屋王の邸宅での宴で、前歌の太上天皇の御製に続けて詠まれたものである。
 題詞の「天皇」は聖武天皇とされる。作者の聖武天皇は文武天皇の皇子で、奈良時代の天皇である。仏教を厚く信仰し、東大寺の大仏を造立した。

 初句「あをによし」は、「奈良」にかかる枕詞である。
 二句「奈良の山なる」は、奈良の山にあるの意である。
 三句「黒木もち」は、前歌の三句と同じで、皮をはがないままの丸太を用いての意である。
 四句「造れる室は」も前歌と同じ言葉で、二首が同じ室を同じ言葉でたたえている。
 結句「座せど飽かぬかも」は、逆接の「ど」と詠嘆の「かも」で、いくらいても飽きないと、主人の心づくしをたたえている。前歌が室の永遠の繁栄を祝ったのに対し、この歌は今その室にいる喜びを詠み、二首が応じ合っている。

くろき:皮をはがないままの丸太
むろ:住まい、ここでは宴のために設けた建物
作者
聖武天皇
出典
万葉集
前の歌
はだすすき尾花逆葺き黒木もち 造れる室は万代までに
次の歌
沫雪のほどろほどろに降りしけば 奈良の都し思ほゆるかも