梅の花枝にか散ると見るまでに
風に乱れて雪ぞ降り来る
- 歌の意味
-
梅の花が枝から散っているのかと見まがうほどに、風に吹き乱されて雪が降ってくる。
- 鑑賞
-
巻第八 冬雑歌 1647
詞書「忌部首黒麻呂の雪の歌一首」
梅の花が枝から散っているのかと見まがうほどに、風に乱れて雪が降ってくると詠む歌である。風に舞う雪を散る梅の花に見立て、冬の景に春の花の面影を重ねている。
作者の忌部黒麻呂は、忌部氏の官人で、伝は未詳である。
初句「梅の花」は、雪を見立てる花を示す。
二句「枝にか散ると」は、係助詞「か」で、枝から散るのかと思わせる。
三句「見るまでに」は、そう見えるほどにの意である。本巻の第千四百二十首の駿河采女の歌も「見るまでに」と、散る花を淡雪に見まがうさまを詠んでおり、春には花を雪に、冬には雪を花に見立てる歌が呼応している。
四句「風に乱れて」は、風に吹き乱されての意である。
結句「雪ぞ降り来る」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「来る」で結ぶ係り結びで、雪が降ってくるさまを強く描いている。
えだ:木の枝
- 作者
-
忌部黒麻呂
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
ぬばたまの今夜の雪にいざ濡れな 明けむ朝に消なば惜しけむ
- 次の歌
-
十二月には沫雪降ると知らねかも 梅の花咲くふふめらずして