古典和歌stream

十二月には沫雪降ると知らねかも
梅の花咲くふふめらずして

歌の意味
十二月には淡雪が降るものだと知らないからだろうか、梅の花が咲いている。つぼみのままでいないで。
鑑賞
巻第八 冬雑歌 1648

詞書「紀少鹿女郎の梅の歌一首」
 十二月には淡雪が降るものなのに、それを知らないのだろうか、梅の花がつぼみのままでいないで咲いていると詠む歌である。雪の季節に早くも咲いた梅を、季節を知らないのかとからかうように詠み、その可憐さをいとおしんでいる。
 作者の紀女郎は、題詞では紀少鹿女郎とされ、名を小鹿という女性である。紀鹿人の娘で、安貴王の妻となったと伝えられる。

 初句「十二月には」は、陰暦十二月で、雪の降る季節である。
 二句「沫雪降ると」は、淡雪が降るものだとの意である。
 三句「知らねかも」は、打消の「ず」の已然形「ね」に疑問の「かも」が付いた形で、知らないからだろうかと推し量り、ここで句切れとなる。
 四句「梅の花咲く」は、梅の花が咲いていると言い切る。
 結句「ふふめらずして」は、つぼみのままでいないでの意で、倒置によって咲き急ぐ梅のさまを最後に示している。本巻の第千四百三十六首の大伴村上の歌は「含めりと言ひし梅が枝」と、つぼみのままの梅を詠んでおり、つぼみの梅と、つぼみを経ずに咲く梅とが対照をなしている。

しはす:陰暦十二月
ふふむ:花がつぼみのままでいる
作者
紀女郎
出典
万葉集
前の歌
梅の花枝にか散ると見るまでに 風に乱れて雪ぞ降り来る
次の歌
今日降りし雪に競ひて我が宿の 冬木の梅は花咲きにけり