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真木の上に降り置ける雪のしくしくも
思ほゆるかもさ夜問へ我が背

歌の意味
真木の上に降り積もった雪のように、しきりにあなたのことが思われる。今夜訪ねてきてください、あなた。
鑑賞
巻第八 冬相聞 1659

詞書「他田広津娘子の歌一首」
 真木の上に幾重にも降り積もった雪のように、しきりにあなたのことが思われるので、今夜訪ねてきてほしいと恋人を誘う歌である。降り積もる雪の重なりに恋しさの重なりを重ね、率直な誘いの言葉で結んでいる。
 作者の他田広津娘子は、伝の未詳な女性である。

 初句「真木の上に」は、杉や檜などのりっぱな木の上にの意である。
 二句「降り置ける雪の」は字余りで、降り積もった雪のの意で、初句からここまでが「しくしく」を導く序詞となっている。
 三句「しくしくも」は、重ねて絶え間なくの意で、雪の重なりと思いの重なりとを結びつけている。本巻の第千四百四十首の河辺東人の歌も「しくしく降る」と、絶え間なく降る春雨を詠んでいる。
 四句「思ほゆるかも」は、自発の「ゆ」と詠嘆の「かも」で、自然と思われることだと言い、ここで句切れとなる。
 結句「さ夜問へ我が背」は、命令形の「問へ」で、今夜訪ねてきてくださいと誘い、「我が背」と呼びかけて結んでいる。

まき:杉や檜などのりっぱな木
作者
他田広津娘子
出典
万葉集
前の歌
我が背子とふたり見ませばいくばくか この降る雪の嬉しくあらまし
次の歌
梅の花散らすあらしの音のみに 聞きし我妹を見らくしよしも