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梅の花散らすあらしの音のみに
聞きし我妹を見らくしよしも

歌の意味
梅の花を散らす嵐の音のように、うわさにばかり聞いていたあなたに、こうして逢えるのは、なんとうれしいことか。
鑑賞
巻第八 冬相聞 1660

詞書「大伴宿禰駿河麻呂の歌一首」
 梅の花を散らす嵐の音のように、うわさにばかり聞いていた女性に、こうして実際に逢えたのはうれしいと詠む歌である。音だけで姿の見えない嵐に、評判だけを聞いていた相手をたとえ、ついに逢えた喜びを表している。
 作者の大伴駿河麻呂は、大伴御行の孫とされる奈良時代の官人である。大伴坂上郎女の娘を妻としたと伝えられ、のちに陸奥按察使などを務めた。

 初句「梅の花」は、嵐に散らされる梅の花である。
 二句「散らすあらしの」は、梅を散らす嵐のの意で、初句からここまでが「音」を導く序詞となっている。本巻の第千四百三十七首の大伴村上の歌も「山のあらしに散りこすなゆめ」と、梅を散らす嵐を詠んでいる。
 三句「音のみに」は、うわさにばかりの意で、嵐の音と人のうわさとを掛けている。
 四句「聞きし我妹を」は、聞いていたあなたをの意である。
 結句「見らくしよしも」の「見らく」は見ることの意で、強意の「し」と詠嘆の「も」を添え、逢えた喜びを表す。本巻の第千四百二十一首の尾張連の歌も同じ結句で、春菜を摘む娘を見る喜びを詠んでおり、春と冬とで人を見る喜びが同じ言葉で詠まれている。

おと:音、またうわさ、評判
あらし:山から激しく吹き下ろす風
作者
大伴駿河麻呂
出典
万葉集
前の歌
真木の上に降り置ける雪のしくしくも 思ほゆるかもさ夜問へ我が背
次の歌
久方の月夜を清み梅の花 心開けて我が思へる君