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久方の月夜を清み梅の花
心開けて我が思へる君

歌の意味
月夜が清らかなので、梅の花が開くように、心を開いて私が思っているあなたよ。
鑑賞
巻第八 冬相聞 1661

詞書「紀少鹿女郎の歌一首」
 月夜が清らかなので、梅の花が開くように、心を開いて思っているあなたよと、恋しい人に呼びかける歌である。清らかな月光のもとで開く梅の花に、晴れやかに相手を思う心を重ね、明るく澄んだ恋の歌となっている。
 作者の紀女郎は、題詞では紀少鹿女郎とされ、名を小鹿という女性である。紀鹿人の娘で、安貴王の妻となったと伝えられる。

 初句「久方の」は、天や月にかかる枕詞である。
 二句「月夜を清み」は、「〜を〜み」の形で、月夜が清らかなのでの意である。
 三句「梅の花」は、初句からここまでが「開けて」を導く序詞となっている。月光の中に開く梅の花を描いている。
 四句「心開けて」は、心を開いての意で、梅の花が開くことと掛けている。
 結句「我が思へる君」は体言止めで、存続の「り」の連体形「る」を用い、私が思っているあなたよと呼びかけて結んでいる。本巻の第千五百九十六首の大伴家持の歌が、恋人の家を訪ねる月夜を「照る月夜かも」と喜んだように、月夜は恋の心を晴れやかにするものとして詠まれている。

つくよ:月夜、月の明るい夜
作者
紀女郎
出典
万葉集
前の歌
梅の花散らすあらしの音のみに 聞きし我妹を見らくしよしも
次の歌
沫雪の消ぬべきものを今までに 流らへぬるは妹に逢はむとぞ