沫雪の庭に降り敷き寒き夜を
手枕まかずひとりかも寝む
- 歌の意味
-
淡雪が庭に一面に降り積もった寒い夜を、恋しい人の腕を枕とすることもなく、ひとりで寝るのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第八 冬相聞 1663
詞書「大伴宿禰家持の歌一首」
淡雪が庭一面に降り積もった寒い夜に、恋しい人の腕を枕とすることもなく、ひとりで寝るのだろうかと嘆く歌である。雪の夜の寒さが、独り寝の寂しさをいっそう深くしている。巻第八の最後に置かれた歌である。
作者の大伴家持は、大伴旅人の子で、奈良時代の官人である。中納言に至り、万葉集の編纂に深く関わったとされ、集中最も多くの歌を残す。
初句「沫雪の」は、泡のように消えやすい淡雪のの意である。
二句「庭に降り敷き」は、庭一面に降り積もっての意である。
三句「寒き夜を」は、寒い夜をの意で、独り寝の寂しさを際立たせる。
四句「手枕まかず」は、腕を枕とすることなくの意で、共寝をする相手のいないことを示す。本巻の第千五百五十五首の安貴王の歌も、秋の明け方の風の寒さに独り寝の寂しさをにじませており、季節の寒さが独り寝の寂しさを深める趣向が共通している。
結句「ひとりかも寝む」は、疑問の「か」と推量の「む」で、ひとりで寝るのだろうかと嘆く。巻頭の第千四百十八首が芽吹く春の喜びを詠んだのに対し、巻末のこの歌は雪の夜の独り寝の寂しさを詠み、巻第八は春の喜びに始まり冬の孤独に終わる構成となっている。
たまくら:腕を枕とすること
まく:枕とする
- 作者
-
大伴家持
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
沫雪の消ぬべきものを今までに 流らへぬるは妹に逢はむとぞ
- 次の歌
-
夕されば小倉の山に伏す鹿の 今夜は鳴かず寝ねにけらしも