あり衣辺につきて漕がさね杏人の
浜を過ぐれば恋しくありなり
- 歌の意味
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荒磯のほとりに沿って漕いでください。杏人の浜を過ぎてしまうと、恋しくてならないようだ。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1689
詞書は前の歌に続き「名木川にして作る歌二首」
荒磯の岸辺に沿って船を漕いでほしい、杏人の浜を過ぎてしまうと恋しくなりそうだからと願う歌である。美しい浜を名残惜しむ心が、漕ぎ手への頼みの形で表れている。
名木川で作った歌二首の二首目とされるが、海辺の浜を詠んでおり、名木川の歌としては内容がそぐわないとする見方もある。杏人の浜の所在は明らかでない。
作者の柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。本歌は柿本人麻呂歌集から採られたもので、この歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が集めた他の人の作とが含まれると考えられている。
初句「あり衣辺に」は、荒磯のほとりに、の意で、「あり衣」は荒磯に衣の字をあてた表記である。
二句「つきて漕がさね」は、岸に沿って漕いでください、の意で、「さ」は尊敬、「ね」は相手にあつらえ望む終助詞である。ここで句切れとなる。
三句「杏人の」は浜の名で、「からひと」と読む。
四句「浜を過ぐれば」は、浜を過ぎると、の意である。
結句「恋しくありなり」は、恋しくてならないようだ、の意で、「なり」は推定の助動詞である。八音の字余りとなっている。
ありそ:荒磯、岩の多い荒々しい海岸
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あぶり干す人もあれやも濡れ衣を 家には遣らな旅のしるしに
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高島の阿渡川波は騒けども 我れは家思ふ宿り悲しみ