我が恋ふる妹は逢はさず玉の浦に
衣片敷き独りかも寝む
- 歌の意味
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私が恋しく思う妻は逢ってはくれない。玉の浦で衣の片袖を敷いて、ひとりで寝ることになるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1692
詞書「紀伊国にして作る歌二首」
恋しい妻に逢えないまま、旅先の玉の浦で衣の片袖を敷いてひとり寝をするのだろうかと嘆く歌である。旅寝のわびしさと妻への恋しさが率直に詠まれている。
紀伊国で作った歌二首の一首目である。玉の浦は和歌山県東牟婁郡那智勝浦町付近の浦とされる。次歌第千六百九十三首と結句「独りかも寝む」を共有している。
作者の柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。本歌は柿本人麻呂歌集から採られたもので、この歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が集めた他の人の作とが含まれると考えられている。
初句「我が恋ふる」は、私が恋しく思う、の意で、次の「妹」にかかる。
二句「妹は逢はさず」は、妻は逢ってはくださらない、の意で、「さ」は尊敬の助動詞で、妻を敬い親しむ言い方となっている。ここで句切れとなる。
三句「玉の浦に」は、旅寝をする地の名を示し、六音の字余りとなっている。
四句「衣片敷き」は、衣の片袖を敷いて、の意で、ひとり寝のしぐさをいう。共寝ならば互いの袖を敷き交わすのに対する表現である。
結句「独りかも寝む」は、ひとりで寝るのだろうか、の意で、係助詞「かも」と推量の「む」が係り結びをなす。次歌第千六百九十三首とまったく同じ結句である。
かたしく:衣の片袖を敷いてひとりで寝る
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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旅なれば夜中をさして照る月の 高島山に隠らく惜しも
- 次の歌
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玉櫛笥明けまく惜しきあたら夜を 衣手離れて独りかも寝む