栲領巾の鷺坂山の白つつじ
我れににほはに妹に示さむ
- 歌の意味
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鷺坂山の白つつじよ、私にその色を染めつけておくれ。妻に見せてやろう。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1694
詞書「鷺坂にして作る歌一首」
鷺坂山に咲く白つつじに、その色を自分の衣に染め移してくれ、家に帰って妻に見せようと呼びかける歌である。旅先の美しい花を妻と分かち合いたいという思いが表れている。
鷺坂は京都府城陽市久世付近の坂で、本巻の第千六百八十七首第千七百七首も鷺坂を詠んでいる。
作者の柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。本歌は柿本人麻呂歌集から採られたもので、この歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が集めた他の人の作とが含まれると考えられている。
なお本文の四句は「我れににほはに」とあり、読み仮名の行の「われににほはね」と一致しない。ここでは本文の表記に従うが、意味は読み仮名の行と同じく、私に色を染めつけておくれ、と解する。
初句「栲領巾の」は、白い領巾の意で、白い鳥である鷺にかかる枕詞である。
二句「鷺坂山の」は、本巻の第千六百八十七首と同じ句で、花の咲く地を示す。
三句「白つつじ」は、初句の「栲領巾」、二句の「鷺」と白を重ね、白一色の清らかな世界を作っている。
四句「我れににほはに」は、私に色を染めつけておくれ、の意で、ここで句切れとなる。「にほふ」は色が美しく映え、染まり移ることをいう。
結句「妹に示さむ」は、妻に見せよう、の意で、「む」は意志の助動詞である。
たくひれ:楮の繊維で作った白い領巾
ひれ:女性が首から肩にかけて垂らした細長い布
にほふ:色が美しく映える、色が染まり移る
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
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玉櫛笥明けまく惜しきあたら夜を 衣手離れて独りかも寝む
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妹が門入り泉川の常滑に み雪残れりいまだ冬かも