巨椋の入江響むなり射目人の
伏見が田居に雁渡るらし
- 歌の意味
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巨椋の入江が鳴り響いている。伏見の田に雁が渡って来ているらしい。
- 鑑賞
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巻第九 雑歌 1699
詞書「宇治川にして作る歌二首」
巨椋の入江に響く声を聞き、伏見の田に雁が渡って来たらしいと推し量る歌である。音によって雁の到来を知る、秋の季節感に満ちた叙景歌である。
宇治川で作った歌二首の一首目である。巨椋の入江はかつて京都盆地南部に広がっていた巨椋池の入江で、伏見は現在の京都市伏見区である。次歌第千七百首も雁を詠み、以下第千七百一首から第千七百三首まで雁の歌が続いている。
作者の柿本人麻呂は持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人である。本歌は柿本人麻呂歌集から採られたもので、この歌集には人麻呂自身の作と、人麻呂が集めた他の人の作とが含まれると考えられている。
初句「巨椋の」は、入江の名を示す。
二句「入江響むなり」は、入江が鳴り響いている、の意で、「なり」は音による推定を表す。ここで句切れとなる。
三句「射目人の」は、伏見にかかる枕詞である。狩で射目に身を伏せる人の意から「伏す」の音でかかる。
四句「伏見が田居に」は、雁の降りる伏見の田を示す。
結句「雁渡るらし」は、雁が渡って来るらしい、の意で、「らし」は根拠のある推量である。二句の「なり」と結句の「らし」とで、聞こえる音から見えない雁を推し量る構成となっている。
とよむ:鳴り響く
いめ:狩で獲物を射るために身を隠す所
たゐ:田、田のあるところ
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あぶり干す人もあれやも家人の 春雨すらを間使ひにする
- 次の歌
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秋風に山吹の瀬の鳴るなへに 天雲翔る雁に逢へるかも